
『速報 (論文紹介)』のページ
最終更新日(2000/5/9)
ここには、数理工学研究室が行なっている、論文紹介のリストを載せています。なお、ここに紹介している論文のアブストは、発表者が書いたものです。内容に関して疑問点、質問等がございましたらそれぞれの発表者に対して E-mail でお願いいたします。
第21回
- 日時:12/22(金)
- 講演者:中村 勝弘(教授)
- 紹介論文: K. Richter:"Semiclassical theory of
mesoscopic quantum systems" (Springer, Berlin,1999
- タイトル: バルク量子輸送の半古典論
- アブスト: 磁場中の量子輸送の「半古典理論」についてreviewする。サブミクロンスケールの量
子ドットは系が位相コヒーレントであり、その量子輸送はランダウアー公式で記述さ れる。この公式は、散乱行列(S行列)の透過成分や反射成分を利用している。しか
し、アンチドット超格子系(シナイビリアードを現実化したもの)では、長さのス ケールに関して、超格子の周期<<平均自由行程および位相コヒーレント長<<体系全体
のサイズ、という大小関係があり、系全体が位相コヒーレントというわけではない。 そのため、バルク全体の量子輸送を記述するには、巨視的な系を記述する久保公式が
適している。まず親しみ易い例として、アンチドットの無い磁場中の2次元電子ガス を考える。そして、電気伝導率におけるシュブニコフ-ドハース振動を「半古典理論
」で導く。続いて、アンチドット系における量子輸送の半古典論について説明する。 最後に、バルク量子輸送の枠内でバリスティック弱局在についてのArgamanの議論を
紹介する。
第22回
- 日時:1/14(金)
- 講演者:寺井 章(助教授)
- 紹介論文: L. Bartosch and P. Kopietz: Phys. Rev.
B60 (1999) 15488.
- タイトル: 空間的に揺らぐギャップをもつ一次元電子系の状態密度
- アブスト: 後方散乱ポテンシャル中の1次元電子系のグリーン関数をリッカチ微分方程式の解で表すことができた。その結果を用いて、ポテンシャルが有限の相関距離をもって揺らいでいる場合の状態密度を計算した。フェルミ点での状態密度は相関距離の-2/3乗に比例することがわかった。
第23回
- 日時:1/21(金)
- 講演者:高根 美武(講師)
- 紹介論文: Yositake TAKANE
- タイトル: 強磁性金属極微細線における電気伝導:スピン波・磁壁揺らぎの影響
- アブスト: 近年、強磁性金属細線における電気伝導が(一部の好事家の)注目を集めている。特に興味深いのは、細線中の磁壁が電気伝導に対する影響である。これまでに、磁壁に伴う(静的なポテンシャルによる)スピン反転散乱の影響についてはいくつかの報告がなされているが、スピンの揺らぎに伴う動的散乱の影響は未だ充分に検討されていない。
今回は、スピン波および磁壁の熱揺らぎによるスピン反転散乱が、どのくらい電気伝導率へ寄与するかを評価した結果について報告する。
第24回
- 日時:4/14(金)
- 講演者:馬 駿
- 紹介論文:Signature of Classical Chaos Oleg Yevtushenko
et al, Phys. Rev. Lett. 84 542 (2000)
- タイトル: Weak Localization in Antidot Arrays
- アブスト: 二次元のアンチドットでの弱局在を考察した。アンチドットでの弱局在の温度依存性と磁場依存性を明らかにしました。アンチドット系はカオス系なので、アンチドットでの弱局在は拡散領域での弱局在と違うということが指摘された。理論結果は測定した結果とよく一致した。
第25回
- 日時:4/21(金)
- 講演者:寺井 章(助教授)
- 紹介論文.Addition Spectra of Quantum Dots:Phys.
Rev. Lett. 83 (1999) 4144
- タイトル: 414Interplay between Interactions and
Geometry
- アブスト: 量子ドットにおける capacitive energy (電子間相互作用のない系
でのレべル間隔に相当する量) の分布を平均場近似の範囲内で計算 した。相互作用が弱いうちはRMTの結果と一致したが、相互作用が強 くなるにつれて、より広がった分布へのクロスオーバーが見られた。
これは長距離クーロン斥力によりドットの端に電荷密度波が立ち、 ドットの有効面積が小さくなるためである。
第26回
- 日時: 4/28(金)
- 講演者:古賀 雄高
- タイトル:磁性絶縁体の電子励起を利用した量子コンピュータ
- アブスト:現在、数多くの量子コンピュータの実現方法が提案されているが アルゴリズムレベルで成功しているのはNMR量子コンピュータ
だけであり、そのNMR量子コンピュータもqubitがふえると出力信号 が弱くなって雑音に埋もれてしまうという致命的な問題を抱えてい る。 今回は、NMR量子コンピュータに替わるものとして磁性絶縁体を
利用した量子コンピュータを提案し、NMR量子コンピュータとの相違 について述べる。さらに、qubit間の相互作用によるデコヒーレンスの 可能性についても考察する。
第27回
- 日時:5/17(水)
- 講演者:西浦 崇介
- タイトル:「超伝導微粒子を介した共鳴トンネリングにおけるペア相関」
- アブスト: 超伝導微粒子におけるペア相関効果についてより深い 理解を得るため、リザーバーに挟まれた超伝導微粒子における
共鳴トンネリングのコンダクタンスピークについて考察する。 ピークの高さや幅にペア相関効果が現れえる事を示す。
第28回
- 日時:6/2(金)
- 講演者:瀧藤 重雄
- タイトル:「Peierls Distortion in Two-Dimensional
Tight-Binding Model」 Yoshiyuki Ono and Tetsuya Hamano
- アブスト:2次元に拡張したSSHモデルで記述される2次元電子格子系におけるパイ エルス歪みについて正方格子に対して研究した。以前に知られていたよ
うなネスティングベクトルQのみを波数にもつ格子歪みは真の最低エネ ルギー状態ではないことがわかった。
第29回
- 日時:6/9(金)
- 講演者:村田 孝夫
- タイトル:不整合からみた電荷密度波とスピン密度波の共存
- アブスト:電荷密度波とスピン密度波が共存することが実験で発見されて以来、その仕組みを解明しようとする研究が近年数多くな
されている。今回の研究はその共存する仕組みを不整合を考慮することで解明する。
第30回
- 日時:6/16(金)
- 講演者:大平 真琴
- タイトル:「スピン・パイエルス系におけるフォノン励起」
- アブスト:スピン・パイエルス系におけるフォノン励起を計算する。その際、SP転移物質CuGeO_3のおいて重要とされる第2近接互作用
の効果に注目して計算を行う予定である。今回の速報ではスピン・パイエルス転移、SP転移物質CuGeO_3についての説明と研究の途中経過を報告する。
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